かつて日本の森にはオオカミがすみ、シカやイノシシを捕食して
いた。しかし1905年、奈良県吉野山中で確認されたのを最後に絶滅したとされる。以来1世紀、天敵不在となったシカは爆発的に増え、森林や田畑の被害の声が日本各地で絶えない。また奥日光ではニッコウキスゲやシラネアオイが危機に瀕し、尾瀬でもミズバショウが食害にあっているという。
2005年11月、野生生物保護学会でオオカミ復活に向けて「日本のオオカミ絶滅百年シンポ」が開かれ、日本オオカミ協会に集う第一線研究者から若手フィールドワーカーまでが最新の研究・調査を発表した。オオカミ不在下でのシカによる森林生態系への影響、オオカミの食性、オオカミと人との共存、の三分野をめぐるその成果を元に広く一般向けに書き下ろされた本書は、「オオカミは人を襲わな
いか」「在来種を食い尽くすことはないか」等の不安・疑問にも丁寧に答えつつ、<オオカミの復活>を訴える。
日本の森林生態系の未来を見すえ、オオカミ復活に賛成の人にも反対の人にも送る問題提起の書。