日本からオオカミが姿を消してからおよそ120年。しばらくの間は人間の狩猟圧によってシカは抑えこまれていましたが、人間がその力を失って以来、シカやイノシシは増え続け、人間の代わりに森を破壊しています。中でもシカの食欲はすさまじく、なんでも食べ、なんでも消化してしまいます。
おかげで日本の森林は壊滅的な生態系被害の様相を呈することになりました。その姿を記録しておこうと思います。
シカが増えすぎた日本の森は、シカの生息密度が高くなるにしたがって急速に劣化していきます。この数々の写真は、過去10年ほどの間に全国各地で見た景観です。どの森も地面から2mくらいの高さまで、緑が消えています。その空間に夜間、シカが現れて植生を食べてしまったのです。
林床の土は流れ出して、低いところにたまり、あるいは渓流に流れ込み、川や湖を埋めてしまいます。豪雨が来れば土や石が麓の街に土石流となって押し寄せる可能性さえあります。登山道でこうした森を見かけたら、そこにはシカが高密度で生息しているかもしれないと考えてみてください。