本書はかつて日本列島に生息し、明治時代に絶滅したオオカミの本当の姿を明らかにしようとしています。第一部はオオカミに対する偏見、心の中に染みついたイメージはどこからくるのか、第二部はオオカミの実際の姿を理解するため、姿かたちだけでなく行動様式と生態系内での役割を知ろうとしています。そして第三部でその理解に至る生物学、生態学の歴史を欧米と日本の生物学・生態学の歴史の比較としてとらえます。第四部は過去に記録された日本人とオオカミの不幸な事故について検証し、第五部では日本列島にどのくらいのオオカミが生息できるのかを推定しました。そしてオオカミがいなくなった日本の森に何が起きたのかを検証し、オオカミの役割について解き明かしています。
オオカミ不在の生態系が引き起こす社会問題を入口に、オオカミと生態系を考えていくと、現在起きているシカ問題をオオカミ問題としてとらえたことで、オオカミの生態系での役割、人間との関わり、社会の中の位置づけ、歴史、おとぎ話や伝承の中での姿などなど様々な側面が見えてきます。
「絶滅したオオカミの謎を探る 復活への序章」が、『ネクパブPODアワード2023』で優秀賞をいただきました。オンデマンド出版のネクパブを利用して昨2022年に出版された本の中でのグランプリ、準グランプリに次ぐ第3位タイランクです。